TVアニメ『ゆびさきと恋々』SP対談

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2024/01/23 21:00

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1⽉6⽇からいよいよTVアニメ『ゆびさきと恋々』の放送が始まりました。皆さんご覧いただけていますでしょうか。今回は、その放送開始を記念してFluffyのために、監督・絵コンテの村野佑太(むらのゆうた)さんと、シリーズ構成・脚本の⽶内⼭陽⼦(よないやまようこ)さんが、森下suu先⽣のお⼆⼈と特別に対談してくださいました。

アニメとあわせてこちらの記事もお楽しみください!

(取材・文 : スピカワークス

 

 

──まず、アニメをご覧になった感想を教えてください(※この対談の時点では、先⽣⽅は1話⽬だけ観たところです)。

 

マキロさん(以下、マ): 最初の頃に「漫画を超えてほしい」と監督にお話ししていたんですけれど、「⾒事に超えられちゃったなぁ」と思いました。本当にスタッフさんたちの熱量がすごくて。

なちやんさん(以下、な): 最初から村野さんのオーラが凄かったですし、お⼆⼈が「全話コンテと脚本を書く」と⾔って本当にそうされたり、「ここまでの愛情を持って作られている現場はあまりない」という声が上がるほどでした。

⽶内⼭さん(以下、⽶): 思い⼊れはめちゃくちゃありました。

マ: 携わってくださっている⽅々の愛が⼤きいから素晴らしい作品になっているのだな、と思います。

な:ありがたい気持ちでいっぱいです。

 

──今お話に出ましたが、今回は村野監督が全話分のコンテを、⽶内⼭さんが全話分の脚本を担当してくださっています。これはアニメでは異例のことだそうですね。

⽶: 全話分の脚本を書く脚本家というのはあまり珍しくないのですが、全話分のコンテを描く監督はとても珍しいと思います。

⼀同: なるほど。

村野さん(以下、村): 今回は個⼈的な想いもあって、「この作品をちゃんとしたものに仕上げたいな」と思っていました。⾃分の中に映像化のルールがあって、「この作品を映像にするならこういうことを守らなくてはいけない、気をつけなくてはいけない」というのを全部箇条書きにしていくのですけれど、検討していくうちに「この作品のコンテは全部⾃分でやったほうが良いだろうな」と思ったんです。今までの作品の中でも、期間的なことも含めて⼀番どっぷりと浸かって作っている作品ですね。

⽶: 村野さんのコンテを⾒てみると、「ここはこの意図がある」だとか、「裏で何を⾒せたい」だとかがハッキリしていて、「すごくいいな」と思っていました。

村: ありがとうございます。それは結構気をつけていて、どのカットでもなぜこのカットをこのサイズで、この尺で⼊れたのか、というのを全部説明できるようにしています。

な: 無駄なものがないですよね。まだ1話⽬しか観ていないんですけれど、テンポが完璧すぎて! だから始まったらずっと観てしまいます。どこかチェックしようと巻き戻しても、そこからまた最後まで観続けてしまって(笑)。

マ: 本当に没⼊できますよね。⾳楽とか他の要素も全部合わさって、圧倒されました。

村: 今回、映像的にも新しいことを少しずつやっています。少女漫画をアニメ化する場合、よく情報を間引いていくという作業があって、たとえば電⾞のシーンでは、窓の外などのディテールをすべて⽩く⾶ばして、余白を大事にしたりするんです。ガタンガタンって⾳はするけど、窓の外は描かれていない、っていう。ただ、この作品は特に、⽿が聴こえない⽅も観てくださるだろうから、「⾳だけに頼って電⾞の⾛⾏感を表現するのはいけないだろうな」と思ったんです。「本来このカットで与えたい情報を、洩れることなく受け取って欲しい」と考え、窓の外に実写を⾶ばして流しました。だから映像の密度的にも、今までの少⼥漫画のアニメ化作品にはない情報量が込められていると思います。その場⾯は⾃分的にもうまくいった表現だったかなと。

マ: 本当に画⾯の密度や美しさが映画みたいでした。

⽶: ⽬を離す隙があまりない作品だから、聴いていないとわからない情報と、観ていないとわからない情報のバランスがすごくいいなって思いましたね。

村: ありがとうございます。

な: すごく考えられていることが随所に感じられて。細かく観てなくても、絶対に何か⾒つけてもらえるような出来栄えでした。

マ: どこで⽌めても意図があって。

な: 演出の意図がすごいですよね。

⽶: そうですよね。⾵景カットとか何気なく観てしまうけど、実はそこには意味があるから。「村野さんさすが」って思います。

な: あのエンディングの予告の⼊れ⽅とかも「わぁ、エモいー」って!

村: エモいでしょ!(笑)

⼀同:(笑)

村: 今回はオープニングからエンディングまで、本編との兼ね合いでどういう感情曲線を描いてどう盛り上げたいか、という強いイメージがありました。それを基に曲を発注したのは今回が初めてでした。だからエンディングのこのタイミングで次回予告を⼊れたら盛り上がるんじゃないかとも思って。本編をどういうオープニングとエンディングで挟むかというプランも最初から全部あったので、先⽣の絵をエンディングに使わせてもらえないでしょうか、という話もしたんですけど、みなさんのおかげで実現して良かったです。

な: 良かったです、本当に。⾊のつけ⽅とかも良かったよね?

マ: うんうん。いろいろな部分が素晴らしくて、「村野さんはパイオニアだな」と感じました。

 

──⽶内⼭さんは脚本を書かれていかがでしたか?

⽶: 全話分の脚本を書いたのは今回が初めてでした。監督が先ほどおっしゃっていたように、私にとっても、「これは⼈に渡せないな」っていう作品だったんです。他の⼿話が関わる作品も書いたことがあるんですけれど、⽿の聴こえない⼈がどう動いて、どう視線を交わしているかみたいなことって、そこに接してきている理解がないと、簡単に後ろから声をかけちゃったり、⽬を⾒てないのに何かしてしまったりと書いてしまいがちなんです。今までのアニメーションのセオリー通りの、⽬を逸らして何か⾔う、みたいなことをやってはいけない作品なので、そこを絶対に外さない、というのを全員に注意するのは難しいかなと思って。

マ: 私も違和感が⽣まれたり、誰かに嫌な思いをさせたりしないように、ユキちゃん(※原作に協⼒していただいている宮崎柚希さん)によく聞きながら描いています。

⽶: そういったこともあり、「絶対に私が書かなくてはいけない作品だ」と思っていました。監督も「全話コンテ描く」とおっしゃいましたし(笑)。私と監督が⼤事なところを握れていれば⼤丈夫だという確信もあったので、書いていて楽しかったしやって良かったなという想いです。

村: いやぁ、頑張りましたね。

⼀同: うんうん。

な: 頑張りましたよ。こんなに⼤変で緻密な作業を⼀年以上って、本当にすごいことです。

 

──お⼆⼈がこの作品を⼤切にしてくださっている気持ちは端々から感じているのですが、改めて『ゆびさきと恋々』という作品への思いを教えていただけますか。

村: 今までどこでも話したことがないことなのですが、この作品を受けるときに⾃分の中でいろいろな思い出がよぎりました。⾃分が⼤学⽣の時にお付き合いしていた⽅が、難聴で⽚⽿が聴こえない⽅だったんですよ。それでも彼⼥は全く耳の聴こえない人のためにノートテイクのボランティアをやっていて、そのときに「⼤変そうだな。俺も何か⼿伝おうかな。」と思いながら、結局⼀歩が踏み出せなかった。あれから何年か経って、たまにその時のことが夢に出てくるんです。「あの時なんで⼀歩踏み出せなかったのか」って。そしてこの作品に出会いました。逸⾂はその⼀歩を出せるじゃないですか、それに僕は救われたんです。⾃分が学⽣時代に踏み出せなかった⼀歩を踏み出せる逸⾂と、雪ちゃんのふたりの世界を描くことで救われるところがあるというか。だから多分いつも以上に⾃分も注⼒しているんだろうなと。

マ: なるほど、そんな経験があったんですね。

な: ⽢酸っぱいですね。

⽶: 私も初めてお付き合いしたのが、⽿が聴こえない男性でした。中⾼⽣時代に、地元の年上の⽅を好きになって。でも彼が⼤学⽣になるタイミングで遠距離になってしまって、お別れすることになったんですよね。

:切ないですね~。

⽶: 遠距離で当時スマホなんかもないから⽂通やファックスで…。

:わぁ~(泣)。

な: お⼆⼈ともそんなドラマを持っていたなんて、なんだかご縁を感じますね。

⽶: あと、雪が孤独じゃないのもすごくいいなと思っていました。今までの、⽿が聴こえない⽅を扱っている作品では、孤独が強調されるシーンがあることが多い気がしていたのですけど、雪が勇気を持っていて⾏動を起こせるキャラクターなのがとてもいいなって思いました。リアルだし、そんなにみんな聴こえないからって引っ込まないので。

マ: 実際にいる⽅ってコミュニケーション能⼒も⾼いし、⾃分の気持ちを⼿話で表現できるのってカッコいいなって思います。

⽶: ⾃分で⾏動を起こしているところが、やはり雪もかっこいいところですよね。⼤学に⾏っているところや、⼈に話しかけに⾏こうとするところ、そういう雪の⾏動⼒が逸⾂とちゃんと響き合っている点でも素敵な作品です。脚本を書くときもそこを拾っていけたらいいなと思っていました。

:ありがとうございます。

 

──さて、いよいよ放送が始まりますが、今どんなお気持ちでしょうか(※この対談は放送開始の約1週間前に⾏いました)。

村: 本当にこの作品は「ベストなタイミングで出るな」と思っています。「⽿が聴こえない」というひとつの個性を描いている作品ですが、先⽣⽅が準備の段階から常におっしゃっていたところからも裏付けされるように、⼈を思いやるっていうのが全部の基準になっているなと。それこそ逸⾂の雪に対する思いもそうだし、雪の逸⾂に対する思いも、原作者のキャラクターとか作品に対する思いも、全部の根底に思いやりがあるなと感じています。僕がこの作品のオファーをいただいた時が、丁度コロナ禍の緊急事態宣⾔の頃で、そのときの周りに対するギスギス感ってすごかったじゃないですか。こういう苦しい時代に、僕たちはどんな作品を出すべきかと考えていた時にこの作品に出会ったんです。⽿が聴こえるか聴こえないかは置いておいて、「周りに対して思いやるっていう気持ちの美しさを届けられるのって素敵だな」と思って、「この作品がアニメ化されるタイミングは、コロナ禍から⽴ち上がってそういう気持ちを欲するタイミングだろうな」とも思ったので、ちょうどその時期にこのアニメを放送することができて、視聴者の⽅々も癒される部分があると思うんですよね。なので、少しでも多くの⼈に観てもらいたいです。

マ: 観た⼈全員に伝わると思います。

な: 私たちも観た時「すごいな~」という感想しか出てこないくらい感動しましたから。

⽶: 思い合う、伝え合うってことの喜びが溢れている作品ですよね。雪と逸⾂が⼀番伝わり合っているというか、届きあってる、響き合っているというのがすごく強くて。同じ⾔語を使っていても伝わらないこととかすれ違うことの切なさも描かれているし、⾔語が違っても思いが通じ合ってピッタリと重なることもあるんだということもしっかりと描かれている作品だと思っています。

: 良かったです。

村: 声優さんたちにも恵まれましたね。

⼀同: うんうん。

⽶: 本当にそうですよ。

村: こんなに作品のことを考えてくれて、なおかつドンピシャにハマる⼈たちがこんなに集まるなんて、顔ぶれを⾒ると驚きますよね。雪、逸⾂はもちろん、他のメインキャストたち全員。みんなすごく寄せてくれていて。アフレコを始める前に、⽿が聴こえない⽅と集まってディスカッションする場を持ったのですが、お願いした⽅々がみなさん参加してくださって、意⾒が⾶び交う積極的な会になりました。その時、「これはいい作品になるだろうな」と強く感じましたね。

マ: 本当にみなさん思い⼊れを持ってくださっていたなと伝わって。思い⼊れと表現⼒って⽐例するじゃないですか。ちゃんと⼀⼈⼀⼈が熱を持って愛を持って演じてくれたんだなぁって。

な: キャラクターにも似ている⽅を選んだという話がありましたよね。だから似ているんですよ、皆さん本当に! 佇まいも似ていて。

村: 似ていますよね。

マ: だから後ろから⾒ていると、キャラクターそのままだなって。どんな顔をして演技しているんだろうっていつも思っていました。

な: 顔は⾒えないからね(笑)。

マ: 前から⾒たいよね。

⽶: それはさすがにやりづらいと思います(笑)。

⼀同: (笑)

な: 改めて、この作品を描く中でたくさんのご縁を感じています。ユキちゃんも主⼈公に雪と名付けてから出会いましたし。ユキちゃんは宮崎柚希ちゃんだから、私たちの出⾝・宮崎とも重なっていたし、さらにアニメでは逸⾂を宮崎遊さんにやっていただくことになるし。

マ: 村野さんと米内山さんのお⼆⼈をはじめ、本当にスタッフさんに恵まれましたしね。

な: とにかく全ての関係者の⽅々に恵まれました。

⽶: それは素敵な原作を描いてくださったからです。それがないと集まれなかったので。

村: よくぞ先⽣⽅描いてくださったなと思いますし、本当に関われて良かったです!

な: それはこちらが⾔いたいです!

マ: 別のインタビューでも⾔ったんですけれど、漫画があるからアニメがあるんじゃなくてアニメがあるから漫画があるので!(笑)

な: もう、気持ちとしてはコミカライズなんです(笑)。

マ: アニメからモチベーションやパワーをいただいています。

な: 絶対アニメで世界が広がっているじゃないですか。漫画ってどうしても少ない⼈数で作っているので。

マ: そうだね、仕事部屋で⼀⼈でね(笑)。

な: そうそう、アシスタントさんくらいじゃないですか(笑)。今回は、いろいろなプロフェッショナルの⽅たちが作品を作るために集まっているところを⾒ることができて、勉強になることが多かったです。

マ: いい経験になりました。

な: もう終わったかのように話していますけども(笑)。

⼀同:(笑)

 

──まだまだ放送は続きますし、アニメチームのみなさんは作業も佳境だと思います。これからも楽しみにしておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いします。今⽇は急遽対談にご参加いただきましてありがとうございました!

:ありがとうございました!

 

──アニメ『ゆびさきと恋々』、まだまだ続きますのでぜひご視聴ください!

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